エフゲニー・オネーギン

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エフゲニー・オネーギン – ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー 1840-1893

三幕の抒情的な情景
アレクサンドル・プーシキンの同名小説に基づく、コンスタンチン・シロフスキーとピョートル・イリイチ・チャイコフスキーによる台本

 

エフゲニー・オネーギン、誤解のための手紙

 

プーシキンが1823年から1831年にかけて執筆し、連載形式で発表した詩的小説は、チャイコフスキーのオペラにインスピレーションを与え、その名を冠した作品である。物語は、文化の違いにより初めから運命づけられた三人の若者、タチヤーナ、レンスキー、オネーギンの平行しながらも和解不可能な人生を描く。フランス語で書きながら純粋なロシアの魂を表すタチヤーナ、ゲルマン的な伝統で教育を受けたレンスキー、そしてメランコリックなバイロン風の衝動を持つ英国風ダンディを目指すオネーギン。作曲家は、器楽の響きを通してロシア的要素と人間的メッセージの普遍性を融合させる。プーシキンの詩小説における、男性形と女性形の韻が絶えず対話するオネーギン連を、当時の劇場慣習に沿って三幕で提示される一連の抒情的な場面に変換し、タチヤーナがオネーギンに宛てた手紙の場面を中心に展開する。

 

若く有望な指揮者ティムール・ザンギエフは、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキーの弟子であり、レ・ザールでの本作第二のプロダクションで音楽監督としてデビューする。彼はその完璧な技術で高く評価されており、スカラ座でのチャイコフスキー《スペードの女王》、ザルツブルク音楽祭でのプロコフィエフ《賭博師》、さらにスカラ座の《オネーギン》、そして近くメトロポリタン歌劇場とウィーン国立歌劇場での公演によりその実力を証明している。物語の中心となる複雑な三角関係は、国際的に活躍中の元Centre de Perfeccionamentの学生マッティア・オリヴィエーリがオネーギン役でバレンシアにデビューし、ベテランのドミトリー・コルチャックが再びレンスキーを演じ、そして《イェヌーファ》で好印象を残したソプラノのコリンヌ・ウィンターズがタチヤーナを演じるという三人の歌手に委ねられている。ローラン・ペリーは、成功を収めた《チェネレントラ》に続き、このブリュッセルのラ・モネ劇場で高く評価されたプロダクションでドラマティックな一面を見せ、感動的で視覚的にも印象的な舞台を作り出し、プーシキンの同名作品の詩的本質を際立たせている。

 

 

あらすじ

 

第1幕

第1場 ラーリン家の庭

1820年ごろのロシアの辺境の農村。この地の女地主ラーリナ夫人には2人の娘がいる。姉のタチアーナは物静かな読書好き、妹のオリガは陽気な社交家だ。屋敷の庭に置いたテーブルでジャム作りに勤しむラーリナと乳母のフィリピエヴナの耳に、2人の娘たちの歌声(二重唱『恋と悲しみの歌は林の向こうから』)が届いている。そこへラーリン家の領地内に住む農民たちが歌を歌いながら(合唱『歩き通しで足が痛いよ』)野良仕事から帰って来て、ラーリナに飾った麦の束を捧げ、感謝の言葉を述べる。喜んだラーリナが彼らに休むように言うと、農夫たちは歌い踊り始める(合唱『小さな橋の上で』)。やがてラーリン家と親しいレンスキーが、新たに隣の屋敷に住むことになったオネーギンとともに現れる。かねてから恋人同士だったレンスキーとオリガは会えた事を喜び合う。タチアーナはオネーギンを一目見るなり運命の人が現れたと感じ、恋におちてしまう。オネーギンはタチアーナに興味を示して話しかける。フィリピエヴナはタチアーナの様子から、彼女の気持ちに気づく。

 

第2場 タチアーナの寝室

寝る時間となっても、タチアーナは興奮してとても寝付くことができない。フィリピエヴナに若いころの恋愛体験を聞かせてくれとせがむが、フィリピエヴナが語るのは恋愛とは無縁の古臭い嫁入りの思い出話ばかりで、タチアーナは興味が持てない。フィリピエヴナが立ち去った後、タチアーナはオネーギンへの思いを手紙にしたためはじめる(アリア『私は死んでもいいの』 - 「手紙の場」として有名な名場面)。はじめこそ書きあぐねるものの、やがて一気に情熱的に書き上げる。そして朝。現れたフィリピエヴナに、タチアーナは孫を通じて手紙をオネーギンに渡してくれるように頼む。

 

第3場 ラーリン家の庭の一隅

庭の茂みの向こうから農民の娘たちの歌声が聞こえている。自分の手紙を読んでオネーギンはどう思っただろうか、と考えているタチアーナの前に、出し抜けにオネーギンが現れ、彼女を動揺させる。オネーギンは手紙をくれたことに一応の礼を述べるものの、自分は家庭生活に向かない人間であり、タチアーナのことも妹のようにしか思えない、と告げ、あなたは自分を律することを学ぶべきだ、とも諭す。冒頭の娘たちの合唱が再度聞こえてくる。

 

第2幕

第1場 ラーリン家の広間

それから数ヵ月後のラーリン家の広間。タチアーナの「聖名祝日」の宴が開かれている。ラーリナ夫人が招いた近隣の地主とその家族、縁者たちが、軍楽隊の生演奏とふるまわれた料理を楽しんでいるが、そうした光景もオネーギンには田舎くさくて無粋なものと感じられ楽しめない。オネーギンは自分をこの会に誘ったレンスキーへの腹いせに、オリガをダンスのパートナーに指名し、レンスキーの不興を買う。やがてフランス人のトリケが現れ、タチアーナの美しさを讃える歌[31]を披露し、一同はそれにやんやの喝采を浴びせるが、なおもオネーギンの機嫌は直らず、レンスキーがオリガと踊る約束をしていたコティヨンまでオリガと踊ろうとする。激高したレンスキーは激しい言葉でオネーギンを罵り、決闘を申し込む。オネーギンは申し出に応じ、一同は騒然とし、タチアーナとオリガは泣き崩れる。

 

第2場 水車小屋・冬の早朝

決闘の場所とされた早朝の水車小屋。レンスキーは自らが連れてきた立会人のザレツキーと共にオネーギンが現れるのを待っているが、約束の時間となっても彼は姿を現さない。レンスキーは人生とオリガへの未練を吐露する(アリア『わが青春の輝ける日々よ』[注 1])。やがてオネーギンが立会人のギヨーと共に姿を見せる。オネーギンとレンスキーはここに至ったいきさつに後悔の念を覚えながらも、促されるままにピストルを手に向かい合って立つ。銃声が響き、レンスキーが倒れる。ザレツキーがレンスキーの死を確認すると、オネーギンは恐怖のあまりその場にうずくまる。

 

第3幕

第1場 サンクトペテルブルクの大舞踏会

それから数年後のサンクトペテルブルクのある貴族の邸宅での舞踏会。オネーギンは決闘の後の数年間を外国での放浪生活のうちに過ごし、その後帰国してこの舞踏会に顔を出したのだったが、未だレンスキーを死なせたことへの呵責の念に苛まれており、心満たされぬ日々を過ごしていた。洗練された、上品ないでたちの客たちはポロネーズ(『エフゲニー・オネーギンのポロネーズ』として単独で演奏されることも多いオーケストラ曲)を踊り、それを終えるやそこここにいくつもの話の輪を作るが、場に馴染めぬオネーギンは一人でいる。やがてグレーミン公爵が夫人を伴って姿を現す。一同は夫人の美しさに目を奪われ、口々に彼女を讃えている。オネーギンは程なく公爵夫人がタチアーナであることに気づき、タチアーナも客がたたいている陰口からオネーギンの存在に気づく。オネーギンがグレーミンに彼女との間柄について問うと、タチアーナは自分の妻であり、自分の寂しい日々に光を投げかけた大切な存在だと、グレーミンは語る(アリア『恋は年齢を問わぬもの』)。オネーギンはグレーミンによってタチアーナに紹介される。かつての彼女からは想像もつかない、気品に満ちたタチアーナの様子に、オネーギンはたちまちに惹かれてしまう。

 

第2場 グレーミン公爵邸の一室

部屋着姿のタチアーナがオネーギンから手渡された恋文を手に困惑していると、オネーギンが入って来る。あなたはかつて自分を拒絶しておきながら、なぜ今になってこのようなことを、目的は財産か名声か、とオネーギンを非難し、自分はすでに結婚した身だ、とオネーギンを拒むタチアーナ。しかしオネーギンはなおもタチアーナの手を握り、抱きしめようとする。タチアーナはいっそう強い調子でオネーギンを拒絶し、部屋を後にする。一人残されたオネーギンは呆然と立ち尽くす。

プログラムとキャスト

指揮 – ティムール・ザンギエフ
演出・衣装 – ローラン・ペリー
美術 – マッシモ・トロンカネッティ
照明 – マルコ・ジュスティ
振付 – リオネル・オッシュ

 

エフゲニー・オネーギン – マッティア・オリヴィエリ+
タチヤーナ – コリンヌ・ウィンターズ
オルガ – クセニア・ドゥドニコワ
レンスキー – ドミトリー・コルチャック
グレーミン公 – ギオルギ・マノシュヴィリ
ラリーナ – アリソン・ケットルウェル
フィリッピエヴナ – マルガリータ・ネクラソワ

 

バレンシア州政府合唱団*
合唱指揮 ジョルディ・ブランチ・トルデラ
バレンシア州立管弦楽団
Alumni Centre de Perfeccionament+

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