クリスマスの祝祭で最も待望されるプロダクションとともに、新しいバレエシーズンが開幕する。ピョートル・イリイチ・チャイコフスキーの《くるみ割り人形》はルドルフ・ヌレエフ版として、1969年以来スカラ座で観客を魅了してきた。ニコラス・ジョルジャディスによる歴史的なプロダクションは、1987年にスカラ座自身によって舞台装置と衣装が刷新された。子どもたちの踊りから家庭的なクリスマスの祝祭、ねずみとおもちゃの兵隊の戦いから雪の結晶の壮麗さまで、音楽と振付は有名なワルツの見事な振付構成の中で融合する。高度な技術、厳格さ、ラインとバランスに満ちた踊りとパ・ド・ドゥは、ヌレエフがこのバレエに与えようとしたドラマトゥルギー的アプローチを明らかにする。光と影の間で、少女クララの夢の旅が描かれる。
あらすじ
第1幕第1場
主人公クララのいるシュタールバウム家では、友人たちを招いてクリスマス・イヴのパーティーが開かれている。招待客の中には、クララの名付け親のドロッセルマイヤーもいる。ドロッセルマイヤーは、子供たちに手品や人形芝居を見せて驚かせた後、不格好なくるみ割り人形を取り出す。クララはなぜかその人形が気に入り、ドロッセルマイヤーに頼んでプレゼントしてもらう。クララの弟(兄)のフリッツが人形を横取りして壊してしまうが、ドロッセルマイヤーが修理する。やがてパーティーは終わりとなり、客たちは家路につく。
真夜中、くるみ割り人形のことが気になったクララは、人形が置かれている大広間のクリスマスツリーの元へと降りていく。その時、時計が12時を打ち、クララの体がみるみる縮んでいく(舞台ではクリスマスツリーが大きくなることで表現される)。そこへねずみの大群が押し寄せ、くるみ割り人形の指揮する兵隊人形たちと戦争を始める。戦いはくるみ割り人形とねずみの王様の一騎討ちとなり、くるみ割り人形は窮地に陥るが、クララがとっさに投げつけたスリッパがねずみの王様に命中する。その隙にくるみ割り人形はねずみの王様を倒し、ねずみ軍は退散する。クララは倒れたくるみ割り人形を心配するが、起き上がったくるみ割り人形は、凛々しい王子の姿に変わっていた。
第1幕第2場
くるみ割り人形は自分を救ってくれたクララに感謝し、その礼にお菓子の国へと招待する。2人は雪が舞う森を抜けて、お菓子の国へと向かう。
第2幕
お菓子の国に到着した2人は、女王である金平糖の精に迎えられる。クララを歓迎するため、チョコレート、コーヒー、お茶、キャンディなどのお菓子の精たちが次々と踊りを繰り広げ、最後は金平糖の精と王子がグラン・パ・ド・ドゥを披露する[注釈 8]。しかし、楽しい夢はやがて終わりを迎える。朝が訪れ、自分の家で目を覚ましたクララは、傍らのくるみ割り人形を優しく抱きしめる。